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計算問題の公開を始めました [学習理論]

『数学は計算力が土台』はいつも書いているところですが、具体的に何だかわからないと思うので作りためていたプリントを公開しました。

一部、現勤務校の定期考査のためのチェック問題が入っていますので、これだけは丁寧に解説を入れています。

勤務校の生徒への公開をしていますので、トップに来るようにリンクを張りなおしています。おかげで本来のコンテンツへはつながらない状態になっていますが、目次だけは見れます。

https://sige-lab.info

しばらくの間は、プリント作成のための組版システム LateX のコードも公開しています。これはプリントの分量から近々に表示しないようにします。


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計算練習で「Let's 脳トレ」 [学習理論]

大学院で川島教授の話を聞いていた時、現場の教員だった僕は次のような仮説を立てた。

音読や単純計算で脳の前頭前野の血流量が増加することは確かめられた。そこで、

「(数学の教員なので)計算練習を授業開始時に行えば、授業中の脳の活動が改善され集中力が向上する。また、計算の正確さや速度も向上する」

という仮説を立て授業開始時に3分間の計算練習を取り入れてみた。取り組ませた問題は某出版社の最も易しい問題集

-百マス計算という選択肢もあったが、高校生に四則演算という選択は適切ではないだろうと判断した。受講している生徒の中にこのレベルの問題が解けない生徒は一人もいない、そんなレベル-

から30問程度を3分間という時間内で計算させる。答え合わせすらやる必要がないくらい平易なレベルだが、指定時間内には終わらない分量の問題を用いた。

実験期間は4週間で、週当たり4回の授業時間。実験の最初の回と最後の回には少し時間をとって「単純記憶テスト」と「単純計算テスト」を行い、実験前後の数値の変化を見た。また、実験に参加していないクラスにも比較テストは受けてもらった。さらに結果は統計的に分析を加えた。

その結果、単純記憶テストの成績は向上することなく、単純計算テストの成績は向上した。また、計算テスト不参加クラスとの比較でも計算力が向上したという統計結果が得られた。

このことから、「短時間に集中して計算テストを行うと計算力が向上する」という知見が得られた。

計算問題のレベルは「(-5+3i)-(-8+7i)を整理せよ」的なきわめて平易なもので、このレベルを一般の進学校の生徒に与えても学力が向上したことは驚きでさえあった。(もちろん、他の手段との複合した結果の学力向上であり「平易な計算問題を短時間に集中して解けば学力が向上する」という野蛮な話は成立しない。)

さらに、この実験の対象としたのは高校2年生だったが、この学年は翌年の大学入試センター試験で過去最高の成績を上げた。計算力を鍛えて速度を向上させることが、1年後の入試まで効果を持続したと思うと感激さえ覚えた。


ただし・・・、はある。この学年の生徒は「先生が勤務を続けながら大学院で学んでいる姿」にある種の尊敬の気持ちを持ってくれた。また、研究を高校現場にフィードバックすることを楽しんでくれた。その意味で「計算力の強化だけがセンター試験の好成績につながった」というのは言い過ぎであろう。一定の成果が上がっていたことは事実ではあるが。
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光トポグラフィーの実験 [学習理論]

光トポグラフィーとは、「毛無かつら」みたいな実験機材で、レーザーを頭皮の表面から内側に向かって照射し血流で反射して戻ってくる光の強さを可視化する実験機材だ。光トポの画像は著作物に指定されているようなので「画像検索」をかけてみてほしい。また、前頭前野に関する画像は川島教授の一般向けの書籍にも多数掲載されている。ここで載せるのは遠慮した。

大学院の実験で光トポを使わせていただく機会を得たのは15年以上前になる。このときちょっとしたいたずらをしてみた。

生理反応として「計算すると前頭前野の血流量が増える」だけでも面白い結果だが、数学の教員としての興味は「理解」と「血流量」に関係があるかであった。その根底に、「理解してなきゃ計算だけができても仕方がないじゃないか」という問題意識があった。

「理解」とはどんな脳の生理的な状態を指すのかという大問題が残ったまま、次のような実験をした。


実験のターゲットは社会科学系の大学院生。数学などわかろうはずもない彼に小平邦彦先生の複素関数論(ガチガチの数学の専門書だ)の一節を音読してもらった。

想定していたのは、「読んでいる内容が理解できないので血流量は増加しない」ということだった。しかし、予想に反し彼の前頭前野の血流量は増加した。これは「理解」と「血流量」との間に関係はないことを意味していた。

すなわち「わかろうが、わかるまいが声に出して読んでいれば、脳の良いトレーニングになる」ということだ。結構画期的な結果だと思う。

勉強を始める前に英語の教科書や古典の教科書を音読することが、脳の準備運動になるということだ。10分程度の音読に続けて勉強を始めるとよい。興味を持った人は是非やってみてほしい。

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脳はトレーニングできるはず [学習理論]

日常の言語活動や学習活動をつかさどる脳の部位は前頭前野と言われる。ちょうど額の内側にあたる部分だ。

ここの血流量に注目したのが東北大学の川島教授だ。

・脳が活発に活動しているとき、前頭前野の血流量は増加する。
・この現象は計算や音読で発生することができる。

川島先生に怒られそうなまとめ方となっているが、おおざっぱにはこのようになる。(そんなに単純ではないことは実験で確かめさせていただいた)

しかし、「前頭前野の血流量の増加」と視点を絞ると、その方法が見えてくる。


むかし、長距離走の世界で「ゆっくり走れば速くなる」という指導書が話題を集めた。

人間の体には毛細血管がいたる所に通っており、必要がない毛細血管は閉じている。これを開いてやることで筋肉に運ぶ酸素の量を増やし、筋肉中に蓄積された乳酸を運び出すことができるようになる。ゆっくり走ることで体中の毛細血管を開き、血流量を改善してやれば長時間にわたって足は動き続けるというのがこの本の主張だった。

実際にゆっくりした速さで60~90分間走ると、少しずつ持久力を要する運動に適したからだができてゆくのが感じられる。年齢・体力にあわせて試してみると面白い。


同様の理屈で、「走ると頭がよくなる」と主張する本も出た。脳の血流量を改善してやることで、脳に酸素がたくさん供給されるようになるということらしい。


そうすると、「十分に酸素を脳に供給する」ことが脳を働させるための下地を作ると考えると、脳の血流量を改善して脳の働きをよくすることは可能である。

こんな単純な話ではないが、あくまでも学習のための「下地を作る」という意味では、脳をトレーニングするということは可能なはずだ。

くどい話ではあるが、あくまでも「下地」の話である。一生懸命走ったけど、成績は全く向上しなかったなんてクレームは、さすがに聞きたくない。

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短期記憶と長期記憶3 [学習理論]

(2から続く)
短期記憶を長期記憶に移行させるイベントとしてさらに「回数」がある。単純な音読だけ取り上げても1回より2回、2回より3回と回数を増やすほうが定着率が良い。教科書などは積極的に音読するべきである。

さらに、「動かす器官を増やす」という方法も有効だ。「書く」という学習方法である。「書く」行為は自分の体をさらに微妙にコントロールすることを要求する。この行為が脳の運動野を刺激して、より強いイベントとなる。ただし時間がその分かかることから工夫は必要となる。

それは罫線なしノート(計算用紙)の使用である。罫線があるとどうしてもその間にきれいに書かなければならないと考えてしまう。このせいで書く速度も落ちる。「どうせ見直すことはない」と割り切って大きい字で書けばよい。しかし、英文などはきれいに書けるに越したことはない。習慣として「丁寧に」書こう。

すこし脱線するが、経験則として数字が汚い人は計算ミスが多い。数字は丁寧に書くべきである。これも別な機会に書きたいと思う。


また、「絵」にすることも効果的だ。これは「理解していないと書けない」ので理解を促進する効果があると思っている。

記憶したい事柄をいかにして長期記憶に移行させるかにはいくつかの手段が実在する。これらを試してみて「自分に合った方法」を見つけることが大切だ。

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短期記憶と長期記憶2 [学習理論]

(前回のつづき)
そうなると、学習内容が定着するとは学習内容が長期記憶に移行した状態をいうことから、どのようにして長期記憶に移行させたらよいかの方法論の話になる。

残念ながら誰にでも効果的な方法というものは存在しない。

短期記憶から長期記憶に移行するためには何らかのイベントが必要となることから、このイベントを、その強さは別として、作り出してやればよい。

代表的なことの一つは「音読」である。音読は「目から情報を脳に入力して」「脳で情報音要素を読み取り」「声帯など体の器官をコントロールして音にして出力する。」単純な作業で声に出すことは若干の気恥ずかしさを伴うことから嫌がる子供も多い。しかし、音読するだけで(理解できなくても)これだけの脳の活動を伴うことがわかる。

音読は別な意味でも学習に効果的である。これは指導者が必要なわけでも何でもないので、普通の家庭の子供さんにはぜひ勧めたい学習方法である。

(3へ続く)



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短期記憶と長期記憶1 [学習理論]

認知科学の定説の一つとして2種類の記憶に関する話がある。記憶の保持時間に関するものだ。

短期記憶は文字通り短期間だけ保持できる情報である。すぐ記憶できるが記憶容量は7文字と一般に言われている。例えば、電話番号や一部のコードなど短くて意味もない文字・数字の羅列だ。紙に書いてある数字をPCに入力するときなど、「一目ですぐ覚えられる」が、すぐ忘れてしまう。

これに対する記憶を長期記憶という。これも文字通り長い時間保持される記憶のことを意味する。少なくとも学習に関する限り、学習内容を長期記憶にしておかないと勉強した意味がない。


目から入った情報は、短期記憶として一瞬だけ脳にストックされる。これに何かの刺激が加わったとき長期記憶に移行され「忘れない」ということになる。

大好きだった異性から「別れましょう」と言われた瞬間の表情、風景、流れていた音楽などは、特に努力しなくても覚えている。これは「ふられる」というショッキングなイベントが「別れましょう」という文字列とともに周囲の風景を巻き込んで長期記憶に移行することから、記憶として定着してしまうということを意味する。その後何年たっても、その音楽を聴くたびに「ふられた異性」を思い出すのは長期記憶のなせる技である。たとえは悪いが、「学習」だけに働いているわけではない。

したがって、短期記憶として入ってきた情報を、いかに長期記憶に移行させるかが学習者の工夫のしどころとなる。

(続く)
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学習理論のススメ [学習理論]

Blogなどで軽々しく書くテーマではないのだが、「勉強したい」「勉強しなきゃ」と考えたときに、やみくもに「覚えなきゃ」「書かなきゃ」と考える子供たちは多いのではないか。本来はこのあたりの学習者の心理構造を考えないと「いい手」は浮かんでこない。その意味で「学習理論」を考えることは重要であり、僕自身もこれを(授業の雑談として)伝えることを心掛けてきた。

最初の今回は「承認欲求」である。

承認欲求は学習に限った話ではなく、子どもに限った話でもない。

身近な例を挙げれば、主婦であれば家族のためにつくった食事に「おいしい」と言ってもらえた時、社会人であれば仕事で努力してうまくやって「やったな!」と褒められたときにうれしく感じる感情が「承認欲求」である。

勉強する場面で、この「承認欲求」を上手にくすぐってやることが「子供のやる気」を引き出す。

難しいのは、簡単な問題ができて褒められても「馬鹿にされた」と感じる子供も少なくないことだ。

① わかりそうな気がするけど、簡単には解けない。
② 努力すると(友人と協力すると)解決できた。
③ 先生(親)から「できたね」と褒められた。

の進行が継続できると、子どもはどんどん「自分はできる」と思い始めて自分で努力を始める。
でも、①の問題の設定が本当に難しい。ここが先生の腕の見せ所となる。

今話題のプログラミングも、この心をくすぐるのには良い材料なのだと思う。

ちなみにネットゲームにはプレイヤーの承認欲求をくすぐる仕掛けが数多く仕掛けられている。スペース的に難しいので、この話は「種まき」だけにしておく。特に情報教育に関心を持つ方々は、ちょっと考えてみるとよい。

承認をめぐる病.pngまた、筑波大学の斎藤環先生の「承認をめぐる病」が詳しいので、興味を持った方には一読を勧める。
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